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ダッシュボードの実行ユーザー:誰の目線でデータが見えるのかを決める仕組み

結論:まずこれだけ覚える

  • [自分]または[別のユーザー]を指定した固定ダッシュボードは、その指定ユーザーのデータアクセスで集計されます。
  • [ダッシュボード閲覧者]を指定した動的ダッシュボードは、閲覧者本人のデータアクセスで集計されます。
  • ダッシュボードを開けるかどうかはフォルダー共有、表示されるデータ範囲は実行方法、内容と鮮度はソースレポート・フィルター・更新時点にも左右されます。共有設定を変更せずに固定ユーザーの視点を共有できますが、閲覧者本人より広いデータを見せる可能性があるため、実行ユーザーとフォルダー共有をセットで設計します。

実行ユーザーとは何か

Salesforceのダッシュボードは、裏側でレポートを走らせて数字を集計しています。このとき「誰のログイン権限でレポートを走らせるか」を指定するのが**実行ユーザー(Running User)**です。 固定ダッシュボードでは、指定した実行ユーザーがアクセスできるデータで数字が決まります。一方、動的ダッシュボードでは、閲覧者本人が実行ユーザーとなります。「ダッシュボードは常に閲覧者以外の権限で動く」という理解ではなく、[ダッシュボードを次のユーザーとして表示]の設定を確認することが重要です。 たとえば、全社データへアクセスできる管理者を固定実行ユーザーにすると、ダッシュボードフォルダーへアクセスできる営業担当者にも、本人の通常のレコードアクセスを超える集計値やコンポーネントデータを表示し得ます。反対に、アクセス範囲が狭いユーザーを固定すると、より広い権限を持つ閲覧者が開いても、その固定ユーザーの範囲で集計されます。

「表示できる」と「開ける」は別の話

混同しやすいので分けて覚えてください。

何を決めるかどこで決まるか
ダッシュボードを開けるか(画面にたどり着けるか)ダッシュボードが置かれたフォルダーの共有
ダッシュボードにどの数字が出るか実行ユーザーの設定

フォルダー共有はダッシュボードを開く入口を制御します。固定・動的のどちらで集計するかは実行方法で決まりますが、実際の表示内容にはソースレポート、ダッシュボードフィルター、項目アクセス、最終更新時点も関係します。


実行ユーザーの3つの設定パターン

Lightning Experienceのダッシュボード編集画面では、「ダッシュボードのプロパティ」から表示方法を選びます。

設定誰の権限で集計されるか使いどころ
自分(Me)ダッシュボードを編集して[自分]を選択したユーザーそのユーザーの視点を固定して共有
別のユーザー(Another person)指定した固定ユーザー全社共通の数字を、共有設定を変えずに全員へ見せたいとき
ダッシュボードを表示しているユーザー(動的ダッシュボード)開いた人それぞれ同じ1枚で、各自の担当分だけを見せたいとき
閲覧者に実行ユーザーを選ばせる閲覧者が権限の範囲内で選んだユーザー[チームのダッシュボードを表示]を持つマネージャーが、部下の目線に切り替えて確認したいとき

動的ダッシュボードとは

動的ダッシュボードは、実行ユーザーを「今それを見ている人」にする設定です。Salesforce公式は「動的ダッシュボードは、各ユーザーがアクセス権を持つデータのみを表示する」と定義しています。 つまり1枚作れば、営業担当Aが開けばAの数字、営業担当Bが開けばBの数字が出ます。ユーザーごとにダッシュボードを量産する必要はありません。 ただし動的ダッシュボードには組織あたりの標準上限があり、Enterprise Editionは5件、Performance/Unlimited Editionは10件、Developer Editionは3件です。上限増加は有償申請の対象です。動的ダッシュボードは無制限に作れる機能ではありません。


よくある3つの場面と正解の打ち手

場面1:全員に全社の数字を見せたい。でも共有設定は変えたくない

実行ユーザーを「全商談を参照できるユーザー」に固定する方法があります。共有設定(OWD)を緩めるより影響範囲をダッシュボードへ限定しやすい一方、これは閲覧者本人より広いデータを意図的に表示する設計です。表示する集計値・明細・ドリルダウン先を確認し、ダッシュボードフォルダーを必要な利用者だけに共有します。

場面2:ユーザーごとに違うデータを見せたい

動的ダッシュボードにします。ダッシュボードフィルターは表示対象を絞り込む機能であり、レコードアクセスを付与・制限するセキュリティ境界ではありません。固定実行ユーザーが広いデータへアクセスできる場合、フィルターの初期値だけを頼りに機密範囲を隠す設計は避けます。

場面3:実行ユーザーが退職した

これが見落とされがちな運用上の罠です。Salesforce公式の「ユーザーの無効化に関する考慮事項」は、ダッシュボードの所有者または実行ユーザーを無効化すると、そのダッシュボードが期待どおりの結果を返さなくなると明記しています。 退職者を無効化する前に、実行ユーザーを在籍しているユーザーへ差し替えてください。手順は次のとおりです。

  1. 対象のダッシュボードを開き、[編集]をクリックする
  2. [ダッシュボードのプロパティ]を開く
  3. [表示するユーザー](実行ユーザー)を有効なユーザーに変更する
  4. 保存する
  5. その後、[設定]→[ユーザー]で対象ユーザーの[有効]チェックを外す

想定外に広く見えているときの調査手順

  1. 対象のダッシュボードを開き、画面上部の「表示中:〇〇」(Viewing as)の表示を確認する
  2. [ダッシュボードを編集]→歯車アイコン(プロパティ)を開き、実行ユーザーの設定を確認する
  3. 広い権限を持つユーザーが固定されていれば、[ダッシュボード閲覧者]に切り替えて動的ダッシュボードにする
  4. 全社合計をあえて見せる場合は、実行ユーザーを維持したうえで、フォルダーの共有範囲を必要な人だけに絞る
  5. 保存後、権限の狭いユーザーで表示件数を確認する

よくある症状と原因

症状1:ダッシュボードの数字と、レポートを開いた数字が違う

原因は2つあります。

  1. 権限の違い — 固定ダッシュボードは実行ユーザーの権限で集計されますが、レポートを開いた瞬間は自分自身の権限で実行されます。見えるレコード数が違えば数字も違います。
  2. 鮮度の違い — ダッシュボードは最後に更新した時点のスナップショットを表示します。レポートは開くたびに最新データで走ります。

症状2:ダッシュボードの「最終更新日」が更新されない

実行ユーザーが実行できないレポートがコンポーネントに含まれていると、更新が完了せず、最終更新日時が変わりません。項目レベルセキュリティなどで実行ユーザーがソースレポートを実行できないケースが代表例です。


よくある質問

Q. 実行ユーザーを設定すると、閲覧者は本来見られないデータを見てしまいませんか。 A. そのとおりです。それが実行ユーザーの仕様です。だからこそ、機密性の高いダッシュボードはフォルダー共有で閲覧者を絞る必要があります。 Q. 動的ダッシュボードなら誰に見せても安全ですか。 A. 動的ダッシュボードのデータは閲覧者本人のアクセス範囲で集計されますが、「誰にでも共有してよい」という意味ではありません。ダッシュボードを開くにはフォルダーアクセスが必要であり、閲覧者が元から持つオブジェクト・項目・レコードアクセスの範囲ではデータが表示されます。フォルダー共有、コンポーネント、ソースレポート、ドリルダウン先を通常どおり確認します。 Q. レポートも同じ仕組みですか。 A. 違います。レポートは常に「実行した本人の権限」で動きます。実行ユーザーという概念があるのはダッシュボードだけです。


出典(Salesforce公式)