結論:まずこれだけ覚える
- Salesforceのユーザーレコードは削除できません。
- ライセンスを別のユーザーに割り当てられる状態にするには、ユーザーを**無効化(非アクティブ化)**します。
- 凍結はログインを即時停止する一時措置で、ライセンスは解放されません。
- 無効化すると利用可能なライセンス枠は戻りますが、契約上の購入数や請求額が自動的に減るわけではありません。
なぜSalesforceはユーザーを削除させないのか
他のシステムに慣れていると、「退職した人のアカウントは削除する」のが自然に思えます。しかしSalesforceには、ユーザーを削除するボタンがありません。 理由はデータの整合性です。ユーザーは、自分が作成・所有・更新した無数のレコードから参照されています。商談の所有者、ケースの作成者、活動の登録者、承認履歴の承認者――これらを成り立たせるには、ユーザーレコードが永続的に存在し続ける必要があるのです。 だからSalesforceは、削除の代わりに無効化という手段を用意しています。
3つの選択肢を比べる
| ログイン | ユーザーライセンス | レコードの所有権 | 主な用途 | |
|---|---|---|---|---|
| 無効化 | できない | 解放される(他の人に割り当て可能) | 保持される | 退職・長期離脱 |
| 凍結 | できない | 解放されない | 保持される | 即時のアクセス遮断、無効化前の一時措置 |
| 削除 | ― | ― | ― | 存在しない |
無効化(Deactivate)
ユーザーレコードの[有効]チェックを外す操作です。ログインできなくなり、占めていたユーザーライセンスが解放されて、別の人に割り当てられるようになります。過去のレコードや履歴はそのまま残ります。 退職者の最終的なアクセス停止では、通常は無効化を行います。依存関係の解消に時間がかかる場合は、先に凍結してから無効化します。
凍結(Freeze)
ユーザーのログインを即座に止める操作です。もっとも重要なのは、凍結してもライセンスは解放されないという点です。 なぜ凍結が必要なのか。ユーザーが組織設定から参照されていると、無効化前に参照先を変更しなければならない場合があるからです。代表例は次のとおりです。
- カスタム階層項目で選択されている
- デフォルトのリード所有者、ケース所有者、ワークフローユーザーなどに指定されている
- ワークフローメールアラートの唯一の受信者になっている
- 承認者や代理承認者など、無効化後の処理を滞らせる可能性がある担当設定に残っている こうした依存関係の確認・差し替えには時間がかかります。その間の不正アクセスを防ぐために先に凍結し、準備が整ったら無効化します。
カスタム階層項目とは
階層関係(Hierarchical Relationship)は、ユーザーオブジェクトだけで使える特別な参照関係です。「上司」「承認者」のように、ユーザーから別のユーザーを指す項目を作るときに使います。他のユーザーレコードのカスタム階層項目から参照されているユーザーは無効化できず、参照元の各ユーザーレコードで項目値を別のユーザーに変更するか空にして参照を解消する必要があります。件数が多い場合は、公式ナレッジが案内するData Loaderによる一括クリアも利用できます。カスタム階層項目は無効化を直接ブロックする代表例ですが、デフォルト所有者やワークフロー設定など、他の依存関係も併せて確認します。
よくある誘惑:「退職者なので凍結しました」
認定試験では、「新しい従業員にライセンスを割り当てたい」という問題で、選択肢に「凍結する」が必ず並びます。 判定の軸は1つだけです。
ライセンスを空けたいのか? → 無効化 今すぐログインを止めたいだけか? → 凍結 問題文に「ライセンスを再利用する」「新しいユーザーに割り当てる」とあれば、答えは無効化です。ただし、無効化は組織内の利用可能枠を戻す操作であり、契約上の購入数や請求額を減らす手続きではありません。「コストを削減したい」という要件だけなら、契約・ライセンス数の見直しは別途必要です。
無効化の前後に確認すること
- レコードの引き継ぎ:所有権は無効化だけでは自動移管されません。Salesforceでは所有レコードを残したまま先に無効化することもできますが、業務継続のため後任への移管計画を立てます。特に、1オブジェクトで10,000件を超えるレコードを所有する場合、Salesforceは無効化前の移管を推奨しています。
- 承認プロセス:承認者や代理承認者になっていないか
- カスタム階層項目:そのユーザーが選択されていないか
- キューやチームのメンバー:抜けたときの影響
- ロール階層:部下がいる場合の上位のつなぎ直し
- 手動共有・取引先チーム・商談チーム:無効化によって直接の手動共有とチーム共有が削除されるため、再雇用時に必要なアクセスを再構成できるよう確認する
- 権限セット・権限セットグループの割り当て:無効なユーザーにも割り当ては残るため、無効化後に外すことが推奨されている 引き継ぎに時間がかかる場合は、まず凍結し、準備が整ったら無効化するという二段構えが実務的です。
手順
凍結する
- [設定]→[ユーザー]→対象ユーザーの名前をクリック
- [凍結]ボタンをクリック
- 解除するときは[凍結解除]
無効化する
- カスタム階層項目やデフォルト所有者など、無効化を妨げる設定参照を解消する。所有権や承認担当は、業務上必要な範囲で引き継ぐ
- [設定]→[ユーザー]→対象ユーザーの[編集]
- [有効]のチェックを外して保存
- [会社の情報]で、ライセンスの使用数が減ったことを確認する
FAQ
Q. 無効化したら、その人が持っていたレコードは消えますか? A. 消えません。所有者はそのユーザーのまま残ります。所有権の移管は常に無効化の前提条件ではありませんが、業務継続のため必要に応じて後任へ移管します。所有レコードが多い場合は、アクセス更新の負荷を避けるため事前移管が推奨されます。 Q. 無効化したユーザーを戻せますか? A. ユーザーレコードは、必要なライセンス枠があれば再び[有効]にできます。ただし、無効化時に削除された手動共有やチーム共有は、再有効化だけでは元どおりになりません。取引先チーム・商談チームのアクセスは再確認し、以前に参照・更新権限があったチームメンバーでも再有効化後に参照のみになる場合があるため、必要な共有を再設定します。 Q. ユーザー名を使い回せますか? A. ユーザー名はSalesforce全体で一意であり、同じ文字列を複数ユーザーが同時に持つことはできません。無効化した旧ユーザーがそのユーザー名を保持している間は、新しいユーザーに同じユーザー名を設定できません。再利用が必要なら、旧ユーザーのユーザー名を変更するなど、先に重複を解消します。メールアドレスはユーザー名とは別で、複数ユーザーに同じアドレスを設定できます。 Q. 凍結とパスワードリセットはどう使い分けますか? A. アカウント乗っ取りの疑いなど、ログイン自体を止めたい場合は凍結です。パスワードリセットだけでは、新しいパスワードを知った人はログインできてしまいます。
出典(Salesforce公式)
- Considerations for Deactivating Users — 無効化を妨げる設定参照、無効化後の影響、無効化したユーザーは利用可能ライセンス数には算入されない一方で請求ライセンス数は減らないこと、および所有レコードが多い場合の事前移管の推奨を裏付けます。
- Asynchronous Deletion of Obsolete Shares — ユーザーの無効化により、手動で割り当てられた共有とチーム共有が削除されること
- Deactivate Users — ユーザーを無効化する手順と、ユーザーを完全削除できないこと
- Add Users(Trailhead:User Management) — ユーザーは削除できないこと、無効化するとライセンス枠が解放されること、凍結ではライセンスが解放されないこと
- Usernames and Passwords — ユーザー名の一意性と、旧ユーザーを無効化した後にユーザー名だけを再割り当てする際の考慮事項
- Reuse the Username Associated with an Inactive User — 無効な旧ユーザーのユーザー名を変更すると、元のユーザー名を新しいユーザーへ再利用できることを裏付ける
- Guidelines for Adding Users — ユーザー名はSalesforce組織全体で一意で、メールアドレス形式である必要がある一方、ユーザーレコードのメールアドレスとは別の値を使用できることを裏付けます。